寺の境内に、 榧(カヤ)の実を持つカニを彫りだした大石があります。 都の天然記念物にもなっている、 善養寺の大榧(カヤ)にまつわるカニです。
善養寺 東京都世田谷区野毛2-7-11
多摩川に近いこの寺の境内には、多種多様な石仏や聖霊獣などが数多く置かれていて驚かされます。その中に、二匹の沢ガニを見事に彫りだした大石がありました。カニは何かを持っています。童話の「さるかに合戦」でカニが持っているのは、握り飯か猿と交換した柿の種です。でも、このカニが持っているのは、何かの木の実(種)のようですが柿の種ではなさそうです。何でしょう、珍しいものを持っています。説明板も添えてありません。
カヤの実を持つ沢ガニ
カニの持ち物が何か判ったのは、家に帰ってからでした。善養寺には、「沢ガニとカヤの木」について次のような伝承があることを知りました。カニが持っていたのは、榧(カヤ)の実(種)だったのです。
村娘が多摩川にさしかかったところ、沢ガニの親子から「今夜は大雨が降るので、川が増水して自分たちは川下に流されてしまいます。今のうちに高台へ連れて行ってください」と、懇願されました。娘は、沢ガニ親子を高台へ連れていってやりました。その夜、沢ガニの言っていたように大雨になり、多摩川は氾濫しました。
翌日、高台にいて流されずに助かった沢ガニ親子が娘のところにお礼にと、榧(カヤ)の実を持ってきました。娘は、カニから貰った榧(カヤ)の実を善養寺の境内にすぐに蒔きました。それが大きく育ったのが、現在、善養寺にある大榧だといわれています。
写真右 善養寺の大榧(カヤ)
善養寺の大榧(カヤ)は、東京都指定の天然記念物になっていて、樹齢600年から700年と言われ、高さは20.6m、幹周囲5.25mあります。