境内にある手水の水口で 圧倒的に多いのは 龍、次いで神使などですが、 神話を語る水口もあります。

① 時を告げるのが遅れて竜田川に流された鶏 

龍田神社

              奈良県生駒郡斑鳩町龍田1丁目5番3号

龍田(たつた)神社の手水場の鶏は、社に伝わる神話を語るものです

この手水場の鶏は、往馬(いこま)大社(通称生駒神社-奈良県生駒市)の「鶏追い神事」(毎年元日の夜明けの3時から行なわれる)の由来に拘わるものとされます。竜田川上流の往馬大社を追われた鶏が川下の龍田神社に拾われたという神話(下記)を物語っているとのことです。

007-1-1

 トキ(時)を告げるのが遅れて竜田川に流された鶏

神功皇后が三韓征伐に出征の際、生駒の地(往馬大社)で一夜兵馬を泊めた。この時、皇后は明朝の早立ちに備えて、鶏に早くトキを告げて兵を起こすように命じた。しかし、鶏は鳴き遅れてしまい、出兵も遅れた。これに怒った神功皇后は、鶏を竜田川に流してしまった。

流された鶏は下流で竜田の神(龍田神社)に拾われたと伝わる。

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② 三輪山の神は、蛇神で酒造りの神

三輪明神 「大神神社(おおみわじんじゃ)」

                     奈良県桜井市三輪1422

手水舎にある水口は、三輪山の祭神、大物主神が蛇神で酒造りの神であることを物語っています。

 手水舎は、三輪の「しるしの杉」(神杉)の傍らにあります。三輪の祭神、大物主神が蛇神で酒造りの神であることに因んで、蛇が、宝珠を抱え、三本杉の神紋のある酒樽に巻きついて、口からを水を吐いています。

007-2-1

祭神の大物主神は蛇神・・・三輪山の蛇神話(要約)

日本書紀

孝霊天皇の皇女倭迹迹日百襲姫命(やまととどひももそ姫)が、毎夜通ってくる夫(大物主神)に「昼のお顔を拝見したい」と頼むと、「明朝、私はあなたの櫛箱の中に入っているが、その姿に驚かないように」とのことだった。朝になって姫が、櫛箱を開けてみると、中にいたのは小さな蛇だった。姫は驚き泣き叫んだ。正体を見られた大神は恥じ入り、人の姿になって、三輪山に帰ってしまった。このショックで姫は、急にしゃがみこんだはずみに陰部を箸で突いて絶命したという。

古事記

活玉依毘売(いくたまよりびめ)のところに、立派な男が夜毎通ってきた。毘売(姫)はすぐに身篭った。このことを知った両親が姫を問い詰めると、姫はその男の名前も素性も知らないという。そこで両親は、男の氏素性を知るために、夜、男が訪れたとき、糸巻きに巻いた麻糸の先に針をつけ、その針を男の衣の裾に刺しおくようにと、娘に知恵を授けた。朝になって、男の裾に刺した麻糸をたどると、糸は戸の鍵穴を通って外に抜け出し、さらに、三輪山の社まで続いていたという。

この神話では、男の正体は、鍵穴を抜けることの出来る蛇(巳)で、三輪山に座す大物主神であることを暗示している。

右上の写真  巳の神杉(みのかみすぎ)  根元の洞に白蛇が棲み願い事をかなえてくれるといわれます。巳の好物の卵とお神酒が供えられています。

祭神の大物主神は造酒の神

三輪の酒は「倭(やまと)なす大物主の醸(か)みし神酒(みき)」と詠われた味酒(うまさけ)とされ、大物主神は、酒造りの神ともされています。

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