重いものを載せたり担いだりり
神社や寺の境内には燈籠や石碑、手水鉢、大香炉などがあります。これらの重いものを、台座や脚として、動物、力士、鬼、唐人(唐子)などが、背に載せたり担(かつ)いだりしているのを見かけます。また、石碑を載せるのを本業とする大亀に似た亀扶(きふ)も知られています。いずれも重い石造物などに耐えて頑張って支えています。
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① 燈籠を載せる狛犬
久伊豆神社 埼玉県さいたま市岩槻区宮町二番地
② 法燈を載せる龍
日吉山大楽院 神奈川県川崎市中原区上丸子八幡町 (左右一対)
③ 常夜燈を載せる象
讃岐・金刀比羅宮 香川県仲多度郡琴平町 (左右一対)
④ 手水鉢を担ぐ庚申堂の猿(神使)
猫実庚申塔 千葉県浦安市猫実
⑤ 手水鉢の四隅を担ぐ狛犬
第六天神社 埼玉県さいたま市岩槻区馬込
⑥ 手水鉢を担ぐ力士
妙見寺・北辰妙見宮 東京都稲城市百村
⑦ 手水鉢を担ぐ唐人(唐子)
堀之内妙法寺 東京都杉並区堀の内3
⑧ 手水鉢の四隅を担ぐ唐人(唐子)
阿豆佐味天神社 東京都立川市砂川町4 弘化三年(1846)飯島寅吉作
⑨ 楼門の屋根の四隅の棟を担ぐ「棟持ち猿」(神使)
日吉大社西本宮楼門 滋賀県大津市坂本5
⑩ 庚申塔を担ぐ三猿
護国寺 東京都文京区大塚五丁目
⑪ 手水舎の柱を支える亀
江島神社・奥津宮 神奈川県藤沢市江の島 (亀は弁財天の神使/手水の水口も亀)
⑫ 東南西北の牌楼の案内石板を担ぐ中国獅子
浜中華街の牌楼(門) 神奈川県横浜市中区山下町
⑬ 鉄の水桶を担ぐ狛犬
調(つき)神社 埼玉県さいたま市浦和区岸町3
⑭ 大香炉を担ぐ鬼
教学院 東京都練馬区大泉町6
⑮ 大香炉の三隅を担なう鬼
日光山輪王寺三仏堂 栃木県日光市山内
⑯ 大香炉を担ぐ獅子
大恩寺 東京都北区赤羽西6
⑰ 石造香炉の三方を担ぐ力士
東寺(教王護国寺) 京都市南区九条町1
亀趺(きふ)とは、石碑の台石の一種で大きな石亀に似た形をしています。重い石碑を背に載せるのを本業とします。載せている石碑は功績や功徳、人徳などを刻んだものが多いようですが、墓石を載せているものもあります。もともと中国の貴族階級の風習でしたが、江戸時代に日本でも取り入れられました。
亀趺の亀は、贔屓(ひいき)といい、龍の九子のうち龍になれなかった一子で、巨大な亀の形に似た想像上の霊獣です。中国では竜蝠(りゅうふく)とも呼ばれるようですが、贔屓は重いものを載せるのを好み、背に載せた石碑などは永久に倒れないとされます。贔屓(ひいき)は、「贔屓にする」とか、「贔屓の引き倒し」などと用いられる「贔屓」です。
1 地蔵尊を載せる亀趺
金昌寺(秩父4番札所) 埼玉県秩父市山田 亀甲地蔵尊 享保年間造
2 「寿蔵碑」を載せる亀趺
月照寺 島根県松江市外中原町
月照寺は代々の松江藩主の菩提寺ですが、この寺に小泉八雲の随筆に「夜な夜な水を求めて動き回るので、首を切られた」大亀として登場する亀趺があります。六代宗衍(むねのぶ)公五十の賀に七代不昧(ふまい)公が建立したもので「寿蔵碑」と呼ばれています。
安永7(1778)建立 高さ1m、首尾3mの亀趺の上に高さ3mの碑が載る
3 長崎孔子廟の贔屓(=竜蝠)
長崎孔子廟 長崎県長崎市大浦町10-36 左右一対
案内板によると、贔屓(ひいき)(=竜蝠・りゅうふく)は、竜の九子のうちの一子で、日本での石碑台の亀跌(きふ)はこの贔屓(竜蝠)から転化したものと考えられる、とあります。背に載せている石碑には孔子を礼賛する文言が記されています。
4 寺への貢献碑を載せる亀趺
観音禅院 東京都武蔵野市境南町2 平成12(2000)年建立
5 万病ぬぐいの贔屓
東寺(教王護国寺) 京都市南区九条町1
案内版には、「尊勝陀羅尼碑を載せているのは、贔屓(ひいき)という想像上の動物で、竜の子とされ、重いものを背負う事を好む。甲羅に建つ石塔は永遠不滅と言われ、贔屓は万病平癒のご利益があると信じられている。万病ぬぐいの布で贔屓をさすり自身の患部をさすって、布納めの棒に結んで納めて下さい。」とあります。(要旨)
6 亀趺 三基
●讃岐・金刀比羅宮 香川県仲多度郡琴平町 ●浅草寺・奥山 東京都台東区浅草1 ●円覚寺 神奈川県鎌倉市山の内