なぎをお使いとする虚空蔵尊に「うなぎ屋」さんが燈籠を、 牛を神使とする天満宮に「ステーキ屋」さんが牛の石像を 奉納しています。 共に、奉納者は、祭神の神使をお客に食べさせるお店で、気のせいか祭神の眼前で神使を食べるように宣伝しているようにも見えるのですが・・・。

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虚空蔵尊に、燈籠を奉納した「うなぎ屋」さん

うなぎが、どのような由縁で虚空蔵菩薩のお使いとされるようになったかは、漠然としていて定説はなさそうです。しかし、うなぎが虚空蔵菩薩のお使いさらには化身などとされて、うなぎを食べることは禁忌とされている地域はかなり多いようです。特に、虚空蔵尊を祀る地域の人や、虚空蔵菩薩を一代守り本尊とする丑・寅年生まれの人は、うなぎを食べてはいけないとされています。

大満寺虚空蔵尊 宮城県仙台市太白区向山4丁目4-1.

この虚空蔵尊の本堂前の目に付く位置に、うなぎの老舗から奉納された一対の燈籠があります。 奉納「うなぎの開盛庵」と、参拝者に目立つように書かれていて、虚空蔵尊のお膝元で、お使いである「うなぎ」を食べるように宣伝しているようにもみえます。(通常、奉納者名などは裏側に控えめに書かれているのが普通です)

1-1 大満寺虚空蔵とうなぎ

 

参考

うなぎを食べない片貝の住民 

2-1 片貝虚空蔵鰻池

片貝神社・虚空蔵堂   群馬県前橋市東片貝町

鰻は虚空蔵尊の化身とされていたので片貝の住民は鰻を決して食べませんでした。片貝の水を三日間飲用したものは向こう三年間は鰻を食べなかったとの言い伝えもあった程です。

境内に鰻池がありますが、本尊の虚空蔵尊は特に眼病治療に霊験があるとされていて、信者は眼病治癒を祈願して治ると鰻をこの池に奉納・放流しました。そのためか、この池の鰻は信者の身代わりとなって眼を患い、片目の鰻となっていたと伝わります。(右の案内参照)

 

天満宮に、牛像を奉納した「ステーキ屋」さん

平河天満宮 東京都千代田区平河町1-7-5

天満宮の祭神(菅原道真)の神使は牛です。この社の参道に、ステーキ、しゃぶしゃぶなど牛肉料理で有名な銀座「スエヒロ」の関連企業から奉納された牛の石像が置かれています。撫で牛を除いた4体のうち、3体が「スエヒロ」関連企業の経営トップによる奉納で、「スエヒロ」が目立つ奉納札付きです。

天満宮(天神社)の神使が牛ということは比較的広く知られています。その神使の牛を食べさせる店から牛像が奉納されていることになります。牛供養の牛塚の牛とは異なります。神使との拘わりだけから見ると、どこか矛盾(違和感)があるような気がして、すっきりしません。(境内写真:下掲の4体の牛像の内、右手前の牛を除いた3体がスエヒロの奉納)

3-1 平河天満宮境内

 

3-2 スエヒロの牛奉納

奉納 石牛  (右)昭和50年7月25日(株)銀座スエヒロ 千田芳像  (左)昭和60年10月23日(株)スエヒロ レストランシステム 千田弘義

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蛇足:天満宮の牛像について

この神社に奉納されたスエヒロの牛像は首を伸ばして頭を上げ、今にも起き上がりそうな様子で入り口の方を向いて、参拝者を迎えています。(スエヒロの奉納ではない右手前の牛は横向き)

通常、天満宮の牛像は腹這い状(臥牛)で頭を上げず(顎を脚につけ)起き上がる気配は感じられません。天満宮の牛は祭神を守護する役というより、祭神を廟所まで運び道真公に別れを惜しむ牛と考えられるからです。したがって、牛の置かれ方も、入口を背に祭殿に向けて置かれていたり(京都・北野天満宮)、対の双方を向かい合わせて側面を見せて置かれているのが普通のようです。ここに奉納された牛は祭殿を背に入口(参拝者)に向けて置かれています。