京都には、 珍しい鯰(なまず)の図があります。 「瓢箪 鯰」と「弁財天の鯰」 です。

瓢箪鯰(ひょうたんなまず)

妙心寺退蔵院  京都府京都市右京区花園妙心寺町64

退蔵院は、室町時代の狩野元信による「枯山水庭園」や造園家中根金作氏の「余香苑」で知られますが、国宝「瓢鮎図」を所蔵することでも知られます。

「瓢鮎図」(ひょうねんず)は瓢箪(ひょうたん)で鯰(なまず)を押さえる図で、山水画の始祖とされる如拙が、足利義持の命により描いた日本最古の水墨画です。 画図は、農夫が瓢箪で鯰(なまず)をどうして捕らえるか?という禅の公案(問題)で、上部に五山の高僧、三十一人によるさまざまな答えが自書されています。

瓢箪鯰(ひょうたんなまず)は、広辞苑にも載ることわざですが、退蔵院の説明では、世俗的に解釈するとその意味は、瓢箪で鯰を押さえるように、のらりくらりとして要領を得ないと云うこと、また、骨折って功なく到底その目的を果たせない様を云う、とあります。

 

 

 

 

 

 

       瓢箪鯰の瓦
                「瓢鮎図」(ひょうねんず) 部分図
 

弁財天のお使いの鯰(ナマズ)             

鯰(ナマズ)もまた、弁財天の神使とされています。琵琶湖ではまれに黄色いナマズ(ほとんどはイワトコナマズのアルビノ)が捕れますが、古くから、地元の漁師はこの鯰を「弁天ナマズ」と呼んで、琵琶湖に浮かぶ竹生島(宝厳寺)に祀られている弁財天のお使いであるとして、すぐに放流してきたといいます。

下記2社の弁天社に、琵琶湖(竹生島)に近い京都ならではの「弁財天の鯰」の図が見られます。

今宮神社 宗像社(弁天社) 京都府京都市北区紫野今宮町21

境内の末社に、田心姫命(たごりひめのみこと)・湍津姫命(たぎつひめのみこと)・市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)を祀る宗像(むなかた)社があります。素盞鳴尊の十握剣(とつかのつるぎ)から生まれられた宗像三女神です。この宗像三女神は、俗に「弁天さん」と呼ばれていて、江島神社(神奈川県藤沢市)などでも、弁財天として祀られています。

宗像社の社壇の側面の台石に長さ60㎝程の鯰の彫り物があり、鯰は弁財天の使者として彫られたものと云われています。

 

 

 

 

 

 

 

神泉苑 増運弁財天堂  京都府京都市中京区御池通神泉苑町東入ル門前町166

神泉苑の境内に法成就池を背景に弁財天堂があります。案内によると、祭神の弁財天は、安岐の宮島・京都繁昌神社の弁財天と同体で日本三体といわれていて、悪縁を切り、良縁を結び、商売繁盛の神とされています。

この弁天堂の鬼瓦や留蓋に当る部分は、「鯰瓦」となっています。ナマズが弁財天のお使いとされている、稀なケースです。