江戸時代、「お伊勢参り」をはじめ、「讃岐の金比羅(こんぴら)参り」など、参拝の旅は長旅で大変だったことなどから、他の人に代理参拝を依頼する「代参」もひろく行なわれていました。 「代参」を依頼されたのは人ばかりではありません。 飼い主に代わって犬が「こんぴらさん」に代参することもあったといわれます。このような代参犬は、 「こんぴら狗(いぬ)」と呼ばれました。
こんぴら狗(いぬ)
金刀比羅宮 香川県仲多度郡琴平町892-1
飼い主は、犬の首に「こんぴら参り」と書いた袋を下げ、中に初穂料(賽銭)や道中の餌代などを入れて、讃岐方面への旅人に「こんぴら狗」を託します。
犬は旅人や街道・宿場の人々の世話を受けながら、「こんぴらさん」まで連れて行ってもらいます。
金刀比羅宮について代参をすませ、お宮で「御神札」を首の袋に入れてもらうと、犬は再び街道筋の人々の世話になりながら飼い主の元に戻り、「代参」の役割を終えます。
右図 掛軸「金毘羅狗図」(金比羅宮HPより) 部分図 昭和13年 作者:平林春一 所蔵:金刀比羅宮
宿場や街道で、旅人から旅人へと引き継ぎ、託されて、讃岐方面へと旅をする「こんぴら狗」、遠い江戸時代ののどかなメルヘンの世界を感じさせてくれる風習です。
こんぴら狗(いぬ)の銅像
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金刀比羅宮へ登る長い階段の途中に、アニメっぽい「こんぴら狗」の像があります。
この銅像の作者は湯村輝彦氏。湯村は「こんぴら狗物語・走れゴン」と言う絵本を多田とし子と共に1994年に出版(フレーベル館)しています。この縁で、この「こんぴら狗」の銅像をデザインしたと思われます。
現代版、こんぴら狗
現代版、「こんぴら狗」があります。
忙しくて時間がなかったり、遠隔地に出かけられない人などが、自分本人の代わりに、自分の持っている「ぬいぐるみ」に旅行してきてもらおうというものです。
「ぬいぐるみ」を目的地に連れて行ってくれるのは、ぬいぐるみ旅行専門の旅行代理店(※)です。
道中の車窓や観光地の風景、イベント、喫茶、温泉入浴の情景などの中に自分の「ぬいぐるみ」の姿を入れた写真を15枚セットで提供してくれるとのことです。
ぬいぐるみの旅行企画には首都圏を中心に、箱根・草津などの温泉ツアー、東京観光ツア-(東京タワー、明治神宮、浅草、皇居などの1ヶ所)、ミステリ-ツア-、オリジナルツア-(首都圏限定で希望の場所へ)、アメリカ西海岸ツア-などがあるようです。
(※)ウナギトラベル HP:http://unagi-travel.com
写真はウナギトラベルのHPより
注: 本項はPRともとれる記事ですが、私は、この旅行会社やこのサービス分野とは全く無関係な部外者で、単に「こんぴら狗」関連の話題として取り上げたものです。念のため。
朝日新聞に下記のような記事がありました。参考まで。
「私の代わりにつれてって ぬいぐるみ旅撮影」
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