鳥居・楼門・拝殿などには、社名などを入れた「額」 が架かっている場合が多いのですが、 構築物の大きさや豪華さなどに目を奪われて、なかなか、「 額」に書かれた文字の細部にまで気が及びません。 「額」の中には、下掲のように、文字に鳩の姿が隠されているものもあって、筆者の遊び心が感じられます。(八の字が2羽の鳩に)
鳥居の神額は、平安時代に書道の名人とうたわれた藤原行成が一条天皇の勅願により書いたもので、現在のものは、石造りの鳥居となった寛永13年(1636)に、寛永の三筆とうたわれた松花堂昭乗がその筆跡を書き写したものと言われています。
鶴岡八幡宮は、当初、源頼義が源氏の氏神として京都の石清水八幡宮を由比ヶ浜辺に勧請、治承4年(1180)に源頼朝が鎌倉の中心として現在地に移したものです。随身門の額の字体は、勧請した石清水八幡宮の一の鳥居の額を参照したものと思われます。
文化元年(1804)十二月建立の明神型の銅製鳥居。 「八幡宮」の額は播磨姫路十五万石の酒井家十一代当主雅楽頭忠道の書によるもので、八の字は八幡宮の神使の鳩が向かい合う一対の図として形成されています。
善光寺の「鳩字(はとじ)の額」
長野市の「善光寺」の山門(三門)は、寛延三年(1750年)に完成した、二層入母屋造りの門です。これまでもたびたび修理が行われてきましたが、2007年12月に平成の大修理を終えたばかりです。 山門に架かる額は、輪王寺宮公澄(こうちょう)法親王の筆によるものです。三字の寺名の中に五羽の鳩の姿が隠されていることから「鳩字(はとじ)の額」と呼ばれています。「善」に二羽、「光」に二羽、「寺」に一羽の鳩が隠れています。いずれも漢字の点に当たる所です。更に、「善」の一字が牛の顔に見えると言われ、「牛に引かれて善光寺参り」を表しているとされます。 なお、現在の額は、昭和大修理の際に掛けかえられたもので、古い額は善光寺資料館に展示されています。 神使の館 「鳩」へ
鳩文字の牛王宝印(ごおうほういん)
鶴岡八幡宮(神奈川・鎌倉市) 牛王宝印は、熊野三山の牛王宝印が世に知られています。熊野神の神使の八咫烏の鳥文字と宝珠でデザインされ、社名などを表している護符です。 牛王宝印は、火難などの災難除け、病気平癒、厄除けなどの護符とされますが、一方では、裏面に起請文(誓約)を書く誓約書としても用いられました。 鶴岡八幡宮にも「牛王宝印」と呼ばれるご神符があります。こちらは、八幡神の神使は鳩ですので、鳩の鳥文字で書かれています。このご神符は、正月元日から七日の間に行われる、御判行事に際して授与されます。 神使の館 熊野の牛王宝印