渡来系豪族、秦氏に残る古文などに依る伝説には、 「山王(大山咋神)が丹塗の鏑矢(かぶらや)に化身して川を流れ下って、 川遊びをしていた賀茂玉依姫(下賀茂神社の祭神)を懐妊させ、子をもうけた」とあるといいます。 このような伝説に因んでか、山王系神社(日吉・日枝・山王神社など)に置かれている一対のサル像は、 夫婦猿とされ、片方が子猿を抱く像も多くみられます。

また、民間信仰(庶民の女性の間)では、山王系の小社祠に神使とされるサルが祀られ、「山王さん」と呼ばれて、子宝・安産・厄除け(下の病・性病など)の祈願の対象ともされました。陰部の露出した猿像を社に奉納したり、猿像の陰部に紅(朱)色を入れて祈願するといった風習もありました。

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王さん(八坂神社内)  千葉県船橋市印内町2-7-8

    社祠:中には山王の猿像と朱を塗る筆などもある

 

境内の案内坂によると 「印内の八坂神社境内には、葛飾地区でも珍しい、子宝に恵まれたり疫病の予防になるとされる神様がまつられています。ご神体は、サルのオスとメスの2体があり、その股 間に赤い朱を塗ることで、願いがかなうというものです」と、あります。山王さんと呼ばれています。

  

 

 

夫婦で子を抱くサル。今では全身が朱色に・・・

 

 

 

 

山王さま    群馬県高崎市棟高町路傍

棟高町の大乗寺裏の路傍に庚申塔が五、六基建つ一角があり、その中に赤い布を巻いたサルの像があります。赤い布を外してみると、巨乳を左手で支え、あられもない姿をしたサルの浮き彫り像があらわれました。

棟高町の山王さま

庚申のサルではなく「山王さま」と近所では呼ばれているサルです。このサル像に子宝安産、厄除け祈願、さらには女性の順調な成育、結婚や乳の出などを祈ったということです。

参拝の後、当然赤い布を巻戻しておきました。

 

山王社  埼玉県北本市高尾4丁目北袋

山王社(さんのおさま)は斉藤家の敷地の一角に建てられた小さな社です。ご神体は、庚申あるいは帝釈天と思われる石刻像で、元禄十三年(1700年)に北袋村の斉藤喜兵衛が奉納したものだとのことです。社祠の内部は薄暗く、しかも上の格子の間からしか覗けません。目を凝らして見ると、ご神体のある棚下に、山王のお使いの猿の石像が数十体もこちらを向いて並び座っていたので、一瞬たじろぎました。

 この山王社は、地域の人々から「下(しも)の神様」と信じられていて、安産祈願や子宝祈願などがなされてきました。そして、願いごとがかなうと、石の雌猿をお礼に奉納する習わしになっていたとのことです。

      山王社                          祈願成就のお礼に奉納されたサルの石像

 

 

 

 

 

 

 

 

「下の神様」に奉納されている、これらの石猿は、江戸末期ごろのもので、いずれも雌猿で陰部を露出しています。安産祈願・子宝祈願の気持ちが、素朴な形の石猿に象徴されたものと思われます。

 

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